永い言い訳、を振り返って
「永い言い訳」を見た。
消化不良だがとりあえず書く。
正直、期待していたより刺さらなかった。なんだかよく分からなかったです。
考えても「よく分からない」ってことだけは分かる。
おそらく衣笠幸夫という男をどう捉えていいのか手探りのまま鑑賞したからだと思うんですが、すげーもやもやしてます。
物語の核は、幸夫が妻とその死に向き合えるかどうかってのはわかります。
今まで関わって来なかったタイプの人たちや子供たちと出会って成長し変わっていき、やっと逃げることをやめる。このように書くと分かり易い感動作ですが、「永い言い訳」はその枠に素直に当てはまらなかったように思います。
その状態で読み取れたものは他社同士の関係性のジレンマでした。
衣笠幸夫は非常に”見え”を気にする人間として描かれていて、自分のペンネームに単語を付け加えて検索予測を見たり、妻からの呼び方にこだわったりしている。
つまり他人にどう見られるか、見せたいかをコントロールしたいと常に思って、それが言動や行動、服装にまでに表れている。
おそらく鑑賞中の私はそればかりを追っていたような気がする。だけど幸夫は四面楚歌で、その場その場の空気や求められていることに追随してばかりだ。
だからそれを見ていても意味はなく、幸夫の内面を推し量ることが難しい。
けれど人の心は見えることができないし、表面を頼りにコミュニケーションするしかない。このジレンマを身をもって体験して、これが一つのメッセージじゃないのかなーと思った次第です。
他にはありきたりですが、家族・夫婦のあり方のについて考えさせられる映画でした。「人生は、他者だ。」という言葉は解釈に幅があって人によって受け取り方が異なりそうだし、どこまでいっても考えたりない気になる。
以下は各要点のまとめ感想。
・演技
全員よかった。主演のモックンこと本木雅弘は完ぺきだった。冒頭の妻による散髪シーンの鬱屈した感じから、子供たちと触れ合って変わっていき、ふとした時に見せる一人の表情、どれも良い。
竹原ピストルも対照的で映えていた。
深津絵里なんて早々に退場するにもかかわらず、印象に残る。
あと外せないのが子役の二人だ。ありあがちな製作者の意図的な「子役の子供感」が無くて、非常に自然に見えた。兄妹喧嘩のシーンとか駄々をこねるシーンとか、生活感がにじみ出てて本当に存在していそうな錯覚を覚えた。
・物語
話自体はあらすじ程度で終わりなので、特にいうことはない。展開より行間、情感をつかむタイプの映画。個人的には好きでも嫌いでもない。というより苦手な部類。
・音楽
あまり記憶に残っていない。というよりあまり音楽はかかってなかった気がする。劇中で幸夫が花見で歌う曲のチョイスはよかった。
そこでその歌をそのテンションで歌うのかって。ラストの親子によるダンスも感慨深くなる。ほんと、良かったね。
・好きな場面
兄妹喧嘩のシーンはどれも好きです。劇場の隣に年配の方が2人座っていて、歳を重ねたならではの微笑ましい良い反応があって、それも込みで良かった。
とくにお兄ちゃんはラストで反抗していた父親のように頭を丸めていたのが全てを物語っていて感慨深くなった。
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