コロニア、を見て
映画「コロニア」を見ました。
知ったきっかけは最近購読し始めた津田大介のメールマガジン、メディアの現場Vol.227で少しだけ取り上げられていたことです。あらすじを見てよさそうだと思ったし、なによりエマ・ワトソンが主演(大事)。ここ数週間でハリー・ポッターシリーズの映画を見続けていて、これもなにかの縁だと直感しました。仕事も順調で、時間が出来たのでシネ・リーブル梅田で鑑賞してきました。
以下wikiあらすじ
1973年、ルフトハンザ航空の客室乗務員のレナはフライトでチリにやって来たが、折しも軍事クーデターが勃発、恋人でジャーナリストのダニエルが反体制分子として捕らえられてしまう。
ダニエルが収容された「コロニア・ディグニダ」は、表向きは農業コミュニティだが、実態は「教皇」と呼ばれる元ナチ党員パウル・シェーファーが暴力で支配し(ただし、映画内では元ナチ党員の件は触れられていない)、ピノチェト軍事独裁政権と結びついた拷問施設となっていて、生きては二度と出られない恐るべき場所だった。
レナはダニエルを助け出すため、命がけで単身「コロニア・ディグニダ」に潜入する。
結論からいうと70点の惜しく感じる映画でした。
映画の本題であるコロニア・ディグニダの実態を描ききれているかというと微妙だと思います。細部が欠けているのではないかと。(この映画で初めてコロニア・ディグニダを知ったのに上から目線なのは申し訳ない)
あの場所がチリの権力者にとってどのような意味を持っていたのか、どうやって運営され洗脳していたのかという構造的な視点もなくて、とにかく細部の書き込みが足りないと感じました。例えば飲まされていたあの薬は結局なにで、なぜレナは無事なのか。あれを壊したら気付かれるんじゃないのとか。あの人に演技がバレたらみんなにばれるでしょとか。
ただ、恐ろしさだけはしっかりと伝わるので、惜しい。秘密警察に利用されていたなら内部で同じ政治思想を持った者同士で結託したり脱走を試みようとした場面があってもよさそうだし、男性収容者についてなにをしているのかほとんど分からない。また、収容者たちの労働の成果が誰の懐に入り、どれほどの富を偏在させているのかを匂わすものもない。見せないなら見せないでこちらの想像力を掻き立てるお膳立てをびしっとして欲しい。
それと全編を通してぐったりと精神的に参るんですが、ラストが最もくたびれた。ココに関しては、映画の出来とは関係ないので評価がことさら難しい。
正直、そこまでどんな工程を経ていてもあの写真とモノローグがあると、最大級に凹まざるをえない。
銀河帝国がいくら蛮行の限りを尽くしても所詮はフィクションだと見ていられるけど、実際のこの地球上で遠くない過去に起こった出来事だと見せつけられると途端に陰鬱になるな、と思った。
この認識は「人はなぜフィクションだと理解しているホラー映画を怖がれるのか」っていう問と通じるところがあるとか思ったり。
見ていて本当にあの人物には心の底からの拒否反応が出て、同じ人間であることが嫌になるぐらいだったことだけはきちんと書いておく。もう「ショットガン持って来い!」ですよ。
あと、どうしてもラスト手前の展開も正直オチが読めているので、すこし冷めて見ちゃいました。
だた、決して悪い映画ではないです。エマ・ワトソンが体当たり演技をしているし、冒頭の恋愛から後半のギャップはきちんと機能していて正解だし、あの混合行進の場面は素晴らしかった。ただしエマ・ワトソン主演がかえってエグイ描写や政治的な表現を配慮をすることになった気がしないでもないです。実際に映画上ではナチスのナの字もないです(エマ・ワトソンだけが原因ではないと思うが)
エマ・ワトソン目当ての観客をフルスイングで叩き返す勢いはあるので、むしろそこがフックになった人ほど見に行って欲しい。
個人的には「サウルの息子」「マジカルガール」と同じカテゴリーに入ったので、今作が気に入った人はそっちも是非見て欲しい。
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