ゼロ・ダーク・サーティ

「ゼロ・ダーク・サーティ」を見た。

 キャスリン・ビグロー監督によるビンラディン殺害までの過程を描いた映画。同監督の前作は2008年の「ハート・ロッカー」。2015年にはドキュメンタリー「カルテル・ランド」の製作総指揮をしていて、軸のブレなさを感じる。

 「ハート・ロッカー」を少し前に見直していて、そこで抱いた感想と今作の感想はほぼ一致する。以下二点。

 一つはミリタリー描写のリアリティが他の戦争映画より真に迫っているように見えること。CIAなり海兵隊なり危険物処理班なり、その道のプロフェッショナルを誇張なく見せていると思う。もちろん私は専門家ではないので、実際とどれほど同じで違うのか分からない。ドキュメンタリーでもないし、そんな素人を騙すことは簡単だろうけど、前作同様に強い説得力を感じる映画だった。ジョジョのジャイロも「納得は全てに優先するぜッ!!」と言っていたし本当に大事。

 感動的な音楽を挿入して熱く盛り上げるでもなく、その逆もない。この塩梅が非常に好みだ。淡々と状況が進み続ける展開もサスペンスとして楽しめた。

 もう一つは安直な単純化がないところだ。敵である誰かを殺すことがストレートに善だったり良いこととして描かれない。後半は復讐劇となるが、まったく爽快感などなく、宿敵を倒したヒーローもいない。これで良かったのかと、どうしても考えてしまう落としどころは難しい題材にフィットしている。というかこのアプローチしかないと思う。

 この後のイスラム国やISISについて知っているから、勧善懲悪の物語は受け付けなかっただろう。

 エンターテイメントとシリアスが同居している良い映画だった。

カルテル・ランドも話題になっていたので見てみたい。

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