デスノート Light up the NEW World
「デスノート Light Up the NEW World」を見た。
予想通りかつ思いのほか前評判が芳しくなくて、正直期待していなかった。そもそも最近のドラマ版を見ていないし、それとの物語的連なりが無いにせよ、いまさらデスノートかと思わないでもなかった。
スピンオフ作品「L Chage the World」というアレな映画もあったし。
原作漫画は完結してから何年も読んでない。ただ無類に面白かった記憶は残っている。あの面白さの原点はやはり頭脳戦のサスペンス性だったので、どうしてもデスノートというタイトルであればそれを求めてしまうし、映画はそれに応えてほしかった。
今作にそのような頭脳戦は全くなくて、残念だった。あるのは見せたい・進めたい物語の筋書で、全篇を通してディティールが欠けていた。ご都合主義がまかり通り過ぎている。
たとえば、デスノート保有者の紫苑は凄腕のハッカーという設定だが、その能力に対するフォローが無さすぎる。どのようにして世界中にウイルスをばら撒いて、諜報機関にハッキングしたのか全く説明がなく、ただとても凄いハッカーですというキャラクターにされていて説得力がまるでない。電話の逆探知をどのようにして騙したのかの説明もない。
ウィルスについて警察による捜査がされた描写もなく、スルーされまくりだ。仕事しろ。
また、監視カメラのハッキングについて劇中では妨害電波云々と言われるが、リアリティのかけらもない。何の技術だ、それは。しかもそれをトランシーバーの音を頼りに探し出すってダサすぎる。2016年とは思えないレベルでダサい。
Lの後継者である竜崎も後継者たる才能を見せつけてくれず、どんな非凡な才能があるのか全く伝わらない。ひょうきんな人物という面が強調されるばかりだ。
書き出したら色々と噴出してきたのですべては書かないが、大小を問わない気になる点がとにかく多い。警察は無能だし、3人の主要人物も思わず唸るような冴えた行動をしない。警察は顔を隠すためのマスクを常備しとけよ!腕で顔をなんとなく隠してるんじゃないよ!って思うのは私だけじゃないはず。
登場人物の行動や所属組織に止まらず、世界観そのものの突き詰めも甘いと言わざるを得ない。デスノートの存在が公になっているはずなのに普通の人々が素顔を晒しているのが不自然に思える。せめてマスクしてる人が多いとか、なにかしらあるはず。だから顔を隠している警察官たちが目立って、すぐに見つからないか心配になる。
そもそも6冊のデスノートという設定が必要だったのかとさえ思えるほど、話に関係がない。3冊でも4冊でも10冊でも話は成り立ってしまう。ストーリーの展開を見せたいだけで、よくない作品にありがちな「物語が自走していない感じ」とてつもなく強い。
どうも、主要人物の3人の若手俳優を集めて演技させたところで力尽きた印象がある。
ただし、こんなに文句が多くてもラスト近くの展開は驚いたのでそこだけは良かった。
「アイアムアヒーロー」が今年公開の邦画アクションとしてとても良かったので期待していたが、細部を気にしてしまうような作品との相性が悪い監督なのではと少し思った。アイアムアヒーローは出来事の背景を気にする必要があまりなく、状況の逼迫感や人物に掛かる負荷を見せてくれればそれでよかった。2018年公開予定の「BLEACH」がとても気になる。
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